初出掲載:2021年5月7日 最終更新:2022年6月3日
前回の~健康保険編①~に続いて、~健康保険編②~では「国民健康保険」の注意点について解説してみようと思います。
この記事では、専業投資家に必要な社会保険料について
①国民年金
②国民健康保険
の話題を中心に専業投資家の目線で書いていきます。
今回は~健康保険編②~です。
※~年金編~はこちら
【当記事が想定している主な購読者について】
・給与所得を得ている方で専業投資家を目指している方
・配偶者等に扶養されていて金融商品の取引をされている方
・国民年金と国民健康保険の違いが分からない方
・現在健康保険に加入の手続きをしていない(無保険状態の)方
免責事項もご覧ください。
※この記事は~健康保険編①~の続きとなりますので、まだの方は
をご覧いただくと、よりよく理解できると思います。
※当記事では「各都道府県が運営主体となる国民健康保険」を対象としています。
医師の方が加入する「医師国民健康保険組合(医師国保)」や建設業の方が加入する「全国建設工事業国民健康保険組合(建設国保)」などの「国民健康保険組合」とは異なりますのでご注意ください。
・所得控除について:
~健康保険編①~を読んでいて「あれ?」と思った方がいらっしゃるかもしれませんが、所得税や市県民税を計算するときには、「収入ー必要経費」で「所得」を算出した後に、「生命保険料控除」や「扶養控除」などの「○○控除」(所得控除)が所得から引かれるはずです。
しかし残念なことに、国民健康保険料の算定には一般的な「所得控除」はありません。。
基礎控除の43万円のみとなります。
・「病院に行かないからとりあえず保険証は要らない」は後から痛い目をみる:
会社を退職して、
「さぁ今日から専業投資家だ~」
「保険証?」
「病院なんてめったに行かないし、病院に行くときに国民健康保険に入ればいいんじゃない?無駄な保険料もかからないし」
これ、やばいやつです(><)。
~健康保険編①~にも書きましたが、日本は「国民皆保険制度」を採用しているので、無保険は基本的に許されません。
この場合、いざ病院に行きたくて国民健康保険に加入しようと役場にいった場合・・・
「直近に加入していた健康保険の喪失証明書を持ってきてくださいね(^^ニコ)」
と優しく言われ、喪失証明書を見せるとそこには前の健康保険の資格喪失日(退職日の翌日の日付)が!!
「前の保険の資格喪失日に遡って加入していただく事になります。保険料も遡って掛かりま~す(~~キラーン)。」
もしも、遡った期間に実費(10割負担)で病院に行っていた場合の給付がもらえるかどうかは市区町村によって取り扱いが違います。
"保険料は遡るけど給付は遡りません"という鬼の仕組みを採用している市区町村もあります(驚)。
社会保険の資格を喪失したら、14日以内に国保の手続きをしましょう(^^)。
・それでも手続きをせずに放置していたら:
この取り扱いは「国民健康保険"料"」と「国民健康保険"税"」のどちらを採用しているかによって、扱いが変わります(市区町村によって"料"のところと”税"のところがある)。
「料」の方は「国民健康保険法」が担当します。
一方「税」の方は「地方税法」が担当します。
具体的にどう違うかというと「料」の場合は最高2年間遡及して加入しなくてはなりません。保険料も遡って掛かり、遡った部分は基本的に一括で請求されます。
一方「税」の場合は更に厳しくなります。こちらは最高3年間遡及して加入しなくてはなりません。もちろん保険税も遡って掛かり、遡った部分は基本的に一括で請求されます。
(※「料」「税」とも相談次第で分納が可能な場合があります。)
更に、遡って加入した初年は前年に働いていて所得がある場合が多く、特に高額な保険料が請求されることがあります。
退職後、専業投資家でたくさんの所得を得て、税金を払った後のお金はほとんど使ってしまっていたり、次の投資で資金を溶かしたりしていた場合は最悪です。
本当に詰みます・・・
改めて、社会保険の資格を喪失したら、14日以内に国保の手続きをしましょう(^^)。
・退職した後の健康保険の具体的な選択肢:
会社を退職した場合、健康保険については以下の3つの選択肢があります。
①国民健康保険に加入する
②社会保険(国保組合除く)に入っている他者(配偶者でなくてもOK)に扶養される
③任意継続保険に加入する(退職後20日以内に手続きが必要)
ひとつずつ見ていきましょう
まず①ですが、働いていた時の給与収入が700万円だったとします。これは給与所得者の必要経費計算表に当てはめる(必要経費を引く)と所得が約500万円となり~健康保険編①~で扱った保険料例と大体同じになります。
この場合、国民健康保険料は年間約73万円(60,800円/月)かかります。
②は退職後、とりあえず収入見込みが少ない(年間130万円未満)場合に選べる選択肢です。
配偶者の扶養であれば健康保険、年金とも保険料の負担はありません(^^)v。
①~③の中で最強です(笑)。
③の「任意継続保険」というのは、国保組合を除く社会保険にある制度で退職後も最高2年間従前の社会保険を継続できる制度です。
この場合、在職時に保険料を事業所(会社)が半額負担してくれていた部分がなくなるため保険料が概ね倍額になります(驚)。
例えば給与収入700万円で健康保険料が給与から35,000円/月引かれていたら、任意継続保険料は35,000円×2倍=70,000円/月となります。
少し複雑な話になりますが、上記③は「○○○会社健康保険組合」が存在する比較的大きな企業に多いパターンで、この場合は国民健康保険を選んだ方が安くなることもあります(任意継続保険料がバカ高いだけな気もしますが(笑))。
※健康保険組合によっては後述の協会けんぽと同様に"賦課限度額(頭打ち)"が設定されている場合があるかもしれません。
在職中に「協会けんぽ」に加入していた場合は「任意継続保険料」に比較的低い限度額が設定されています。
前出の山口県を例にとると、2021年度の限度額は36,060円/月です。
※参考:協会けんぽ令和3年度保険料額表(令和3年4月分から)
「協会けんぽ」の「任意継続保険料」は相対的に安いので「協会けんぽ」に加入されていた方は「任意継続保険」を選んだほうが保険料が安い可能性があります。
※個人個人の状況により、どの選択肢が最良かは違ってきますので、実際にお手続きをされる際は保険料の試算や、給付等の比較もしっかり行ってください。
例えば、社会保険には「傷病手当」がありますが国民健康保険にはないため、「傷病手当」をもらっている状態で、病気を理由に退職される場合などは注意が必要です。
・退職日に注意:
国民健康保険以外の社会保険を含め健康保険料は月末に資格があるところで賦課されるというルールがあります。
国民健康保険の資格取得日は「退職日の翌日」です。
月末に退職した場合はその翌日、つまり翌月1日が資格取得日となります。
一番多いパターンは、この月末退職ではないかと思います。
しかし月の途中、例えば、12月20日付で退職した場合、翌日の12月21日が国民健康保険の資格取得日となり、12月分は国民健康保険料が1か月分賦課されます。
当然この場合は退職した会社の12月分の社会保険料はかかりません。
これは国民年金保険料も同じ仕組みです。
ここで気を付けたいことは、ちょっとズルい会社だと「月末の前日」を退職日にするよう誘導し退職月の社会保険料(会社負担分)を浮かそうとする事があるところです。
前出の例に当てはめると「12月30日付け退職」とすると、国民健康保険の資格取得日は退職日の翌日12月31日となり、12月分は社会保険料ではなく国民健康保険料が1か月分かかります。
このこと自体は法的には問題ありません。
しかしながら、もっとズルい会社だと12月30日退職にした上に、かかるはずのない12月分の社会保険料をシレっと給料から天引きすることもあります(事務誤りの場合もありますが、もちろん違法です)。
・就職してすぐ退職すると・・・(レアケース):
これはあまりない事ですが、社会保険に加入した同月内に退職した場合、残念ながら社会保険料と国民健康保険料が二重に賦課されてしまいます(TT)。
例えば、4月1日に就職した会社を4月20日付けで退職した場合、社会保険の方は1日でも加入すると必ず1か月分は賦課されます。
しかし、4月21日付けで国民健康保険に加入すると4月末は国民健康保険に資格があるので、4月分1か月分の保険料が賦課され結果的に二重に払うことになります(TT)。
(※年金保険料の方は上記の場合でも後日還付を受けることが可能なようです(^^)。)
就職したら1か月は頑張った方がいいようです。。
・納付(納税)しないとどうなる:
国民年金も含め、滞納に対する対応の厳しさはざっくり「国民年金<国民健康保険"料"<国民健康保険"税"」となります。
以下管理人の主観を含みますが、度重なる催告等を無視し続けた場合・・・
・国民年金→ふんだんに資産があるのに納付しない悪質な滞納者に対しては財産差し押さえ
・国民健康保険"料"→支払う能力があるのに支払わない悪質な滞納者に対しては財産差し押さえ(税金にも滞納があればそちらが優先)。
・国民健康保険"税"→地方税法の則って粛々と財産差し押さえ
こんなイメージです(笑)。
・「被保険者資格証明書」とは:
国民健康保険料(税)を正当な理由なく滞納(督促・催告等を無視するなど)すると、保険証の代わりに「被保険者資格証明書」というものが発行される場合があります。
これが発行されると実質保険証を取り上げられた形となり、これを持って医療機関に行くと、一旦10割負担となります。
その後、役場の窓口で一部負担金との差額(3割負担なら7割分)の請求手続きができるのですが「給付する7割分は滞納保険料に充ててくださいね~」となる場合があります。
ここからは余談ですが、"じゃあ資格証明書なんて要らない"・"病院で10割払えばいいんだろ"と考える方もいらっしゃるようです。
しかし「保険資格が無い=完全無保険」で医療機関を受診すると保険点数の縛り(例えば「血圧の薬を処方したら○○円」みたいな決まり)を受けなくなり、自由診療となります。
つまり、医療機関が自由に金額を決めることができるのです(恐)。
インフルエンザの予防接種の値段が医療機関によって違うのと同じイメージで、悪徳な医療機関でない限り法外な金額を請求することはないでしょうが、理論上はこのようになります(~~)。
・退職金や個人年金を年金形式でもらうのは損?:
サラリーマンを辞めて、専業投資家になりました。
ほとんどの方が退職金は一括でもらうのではないでしょうか。これを年金形式でもらい給付額を増やすという方法があります。
退職金として一括でもらった場合は、所得税の控除もかなり大きくかなりの高額な退職金でなければ所得税・市県民税はかかりません。
さらに、「退職所得」は国民健康保険料の算定対象外となります。
これを年金形式で受け取った場合、受け取った年金形式の退職金は、将来もらう公的年金に掛かる税金や保険料と同じ扱いになるので一括受け取りの場合に比べて不利になります。
同じように、個人年金は満期時に一括でもらった場合、一時所得扱いとなり「特別控除50万円」があり、さらに「その1/2が所得額」になります。この計算方式は国民健康保険料でも同様の扱いです。
これを年金方式で受けとると、やはり年金形式の退職金と同様に公的年金に掛かる税金や保険料と同じ扱いになり、一括受け取りの場合に比べて不利になります。
このような理由から「年金形式でもらう」・「一括でもらう」を選択する場合、「一括でもらう」を推奨します。
税制や、国保の制度が変わる可能性もありますが、現時点(2022年4月)ではこれがベストだと思います。
(個人の状況により全ての方がこうならない可能性もあります。実際に選択する場合はよく確認しましょう。)
・(おまけ)収入が無くても申告しよう:
専業投資家になったけど、儲からなかった・・・(TT)。
この場合、所得税の繰越損失等の申告をされる方は問題ありません。
「損失も少ないし、確定申告はしなくていいか~」と考えている方は注意が必要です。
国民健康保険料(税)を算出する場合「軽減制度」といって所得が少ない人の「均等割」・「平等割」を一定割合減額する仕組み(2割軽減・5割軽減・7割軽減)があります。
確定申告や市県民税の申告、または国民健康保険用の簡易申告のいずれも行っていない場合「所得0円」としては扱ってもらえず、「所得不明」と扱われます。
この場合、前出の「軽減制度」が適用されません。
儲からない専業投資家の方(悲)も申告はしておきましょう。
・第2回のまとめ:
国保料算定に税制のような所得控除はない
加入手続きが遅れると遡って保険料がかかる
任意継続保険の方がお得な場合がある
退職日付に注意
保険料はきちんと納めよう
年金形式で退職金をもらうと損するかも
無収入でも申告はしよう
国民健康保険料はやっぱ高い。と思う。。
さて、今回は国民健康保険について後半の解説をしました。
国民健康保険は専業投資家にとって、意外と負担が大きいと思います。
今回の記事では保険給付についてはほとんど書きませんでしたが、高額療養費などの仕組みを考えると、大きな病気をした時などは健康保険制度はとてもありがたい制度だと思います。
落とし穴に気を付けながら、健康保険制度をうまく利用しましょう(^^)。
第2回も長い記事になってしまいましたが、最後まで読んでいただいた方、本当にありがとうございましたm(__)m
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