初出掲載:2021年5月4日 最終更新:2022年4月4日
前回は国民年金について解説しましたが、今回はより負担の大きい「国民健康保険」について解説してみようと思います。
この記事では、専業投資家に必要な社会保険料について
①国民年金
②国民健康保険
の話題を中心に専業投資家の目線で書いていきます。
今回は~健康保険編①~です。
~年金編~はこちら
【当記事が想定している主な購読者について】
・給与所得を得ている方で専業投資家を目指している方
・配偶者等に扶養されていて金融商品の取引をされている方
・国民年金と国民健康保険の違いが分からない方
・国民健康保険に加入されていて株取引等の繰越損失の申告を考えている方
免責事項もご覧ください。
~年金編~と重複しますが、まずは基本中の基本です
①年金は高齢になった時や障害を負ってしまった時などに、月々決まった金額がもらえる制度です(実際の給付は2か月に1回)。
②健康保険は病気にかかり病院に行ったときに、実際に掛かった医療費の一定割合を保険が負担してくれる制度です。つまり保険証の掛け金です。
「社会保険」に加入されている方は副業による収入が社会保険料に影響することは原則ありません。
国民年金と同様に親族に扶養されている方は年間収入が130万円を超えると、扶養から外れて国民健康保険に加入しないといけません。
(扶養認定の詳細な基準は事業所によって異なることがあります。詳細は各事業所等にご確認ください)
※当記事では「各都道府県が運営主体となる国民健康保険」を対象としています。
医師の方が加入する「医師国民健康保険組合(医師国保)」や建設業の方が加入する「全国建設工事業国民健康保険組合(建設国保)」などの「国民健康保険組合」とは異なりますのでご注意ください。
【国民健康保険について】
みなさんは子供のころから特に気にすることなく、保険証というものが家庭にあった方がほとんどではないでしょうか?
国民健康保険は他の社会保険等に加入していない方は全員加入しなければならない保険制度です(国民健康保険法第5条)。
これを国民皆保険制度といって、海外ではこの制度が採用されていない国もあります(アメリカ等)。
この制度があるおかげ(あるせい?)で保険料を払う代わりに、病院にかかった時の医療費が一定の割合を負担するだけで済みます(税金も多く投入されています)。
・保険料の決まり方(概要)について:
国民健康保険の保険料は住民票上の世帯主と加入している方の前の年の収入で決まり、住民票上の世帯単位で算定、賦課されます。
また、加入者全体の総医療費等を基準に毎年保険料が変わります。
例えば2022年4月~2023年3月の保険料は、2021年1月~12月の収入状況で保険料が決まり、同一世帯全員の保険料合計が世帯主に請求されます(世帯主の方は国民健康保険に加入していなくても納付義務が発生します)。
ちなみに、病院に行かなかったら保険料が安くなるなどはありません・・・(TT)。
75歳以上の方は国民健康保険の被保険者から除外され「後期高齢者医療」へとスライドします(「後期高齢者医療」と国民健康保険では保険料の算定方法が異なります)。
この記事では国民健康保険の保険料について解説します。
国民健康保険の保険料はほどんどの場合保険料の種類3つと保険料の決まり方3(+1)つのブロックから算出されます。
保険料の種類3つは・・・
A・医療分:主に医療機関(病院)にかかった時の給付に使われる保険料です。
B・支援分:主に後期高齢者医療の給付に使われる保険料です。
C・介護分:主に介護保険の給付に使われる保険料です(40歳~64歳までの方に掛かり、65歳を超えると別途介護保険料として請求されます)。
続いて保険料の決まり方3(+1)つは・・・
①所得割:文字通り所得に対して一定の割合で掛かる保険料です
②均等割:世帯の中の被保険者の人数、つまり一人あたりに掛かる保険料です
③平等割:1世帯あたりに掛かる保険料です。
(④)資産割:近年廃止される傾向がある方式で、固定資産の所有に対して掛かる保険料です(固定資産税みたいなもの)。
Aの①~③、Bの①~③、Cの①~③すべてを合計したものが、保険料となります。
・特定口座の収入は算定の対象外:
これは株や投資信託等を取引されている方には嬉しい制度で、特定口座内での収入は税金が源泉徴収されて終了となるため、国民健康保険料の算定において対象外となります(^^)v。
お住まいの役場で「所得証明書」を請求されたことがある方はご存じかもしれませんが、特定口座の収入は所得証明書には記載されません。
ざっくり言うとこの所得証明書に記載される所得が保険料の算定の基準になります。
ただし、税金対策で過去の繰越損失を相殺した場合はその収入は保険料の対象になるので注意が必要です。
"所得税は安くなったが国民健康保険料がそれ以上に高くなった"なんてこともあります。
ちなみに当ブログが主に取り扱っている先物取引は現在のところ特定口座には対応していません(税制変わらないかな~)。
・保険料の決まり方(詳細)について:
では実際どのくらい保険料がかかるのでしょうか?
結論から書くと、この後例に挙げる市において・・・
収入から経費を引いた所得が500万円の場合、年間約75万円の保険料がかかります(驚)。
月約63,000円です。
所得に対するその割合、実に約15%です。
高いですね(汗;)・・・。。。
保険料はお住まいの市区町村によって結構違います。傾向としては都会ほど安く、田舎ほど高くなります。
都会は相対的に若くて働く人が多いため、市区町村全体の収入が多く、また医療機関にかかる人の割合も少ないため保険料が安くなる傾向があります。
逆に田舎ほど相対的に高齢者が多く、医療機関にかかる人の割合が多いため保険料が高くなる傾向となります。
また、言葉は悪いですがど田舎は医療機関が少なく、保険料の納付意識も高い傾向にあるため逆に少し保険料が安い傾向があります。
そのため、程よい田舎(笑)が一番保険料は高くなる傾向にあるようです。
平成29年度の調査では、全国で一番保険料水準が高い都道府県は「徳島県」で一番安い都道府県は「東京都」だそうです(^^)。
(参考:厚生労働省HP・市町村国民健康保険における保険料の地域差分析)
管理人は最近「シン・エヴァンゲリオン劇場版」を観ました(突然;)。
その影響もあり(笑)エヴァの総監督、庵野秀明さんの故郷である山口県宇部市の保険料を例に紹介したいと思います(^^)。
総所得とは総収入から必要経費を引いたものです。専業投資家の方は自営業の方ほど必要経費は無い(売買手数料くらい?)と思いますので、年間の確定プラス額がほぼ総所得になると思います(含み益(損)は確定するまで収入になりません)。
総所得が500万円と仮定し、令和2年度の料率で計算した場合の保険料を見ていきましょう。
算出モデル:40歳単身世帯・年間所得500万円
①総所得500万円から基礎控除33万円を引く
5,000,000円-330,000円=4,670,000円(賦課標準額)
②所得割を計算する
A・医療分(料率9.3%):4,670,000円×9.3%=434,310円
B・支援分(料率2.85%):4,670,000円×2.85%=133,095円
C・介護分(料率2.40%):4,670,000円×2.40%=112,080円
③均等割を計算する
A・医療分:1人あたり23,300円
B・支援分:1人あたり7,100円
C・介護分:1人あたり8,000円
④平等割を計算する
A・医療分:1世帯あたり19,900円
B・支援分:1世帯あたり6,000円
C・介護分:1世帯あたり4,900円
これらを全て足すと年間保険料が算出できます。
結果は・・・
年間保険料748,685円となります。
月額にすると約62,400円です。
先ほども書きましたが、所得500万円に対して約75万円、専業投資家の年間プラス額の約15%が健康保険料に消えていくことになります。。
もし、社会保険のように事業所が半額負担してくれるとしたら、自己負担は31,200円となり妥当な金額のような気もします。
高いか安いかはそれぞれの感覚によるところもありますが、管理人は高いと思います(TT)。
・保険料の限度額について
唯一の救いは保険料に頭打ち(限度額)がある事です。
各区分の限度額は年額で・・・
A・医療分:630,000円
B・支援分:190,000円
C・介護分:170,000円
計:990,000円
この保険料を超えればあとはいくら稼いでも保険料は上がりません。所得に対する保険料の割合も下げることができます。
さらなるメリットは、これが世帯全体の限度額という事です。
つまり、同一世帯の国民健康保険加入者で収入が多い方が複数人いたとしても全員分の保険料を併せて限度額の990,000円となります。
これは税金と違う部分ですね(^^)。
専業投資家になるならたくさんたくさん稼ぎましょう(簡単ではないですが・・・)。
・税金が安くなる:
国民年金と同様に納付した保険料は「社会保険料控除」として、全額所得控除に使えます。
所得税の確定申告などで控除として申告すると、納付した額が所得から差し引かれますので、税率を20%とすると納付した保険料額の20%分ほど所得税・市県民税が安くなる計算になります。
・社会保険料控除を申告する場合の注意点:
老齢年金を受給し次のすべてに該当される場合、基本的に年金から保険料が天引きされます(特別徴収)。
・世帯主が国民健康保険の被保険者
・世帯内の国民健康保険の被保険者が全員65歳以上75歳未満
・収入の対象となる年金の年額が18万円以上であり、国民健康保険料、介護保険料と合わせて、年金額の2分の1を超えない
これに該当した場合、世帯主以外の保険料が含まれる場合でも世帯主(保険料の納付義務者)本人の社会保険料控除としてしか申告できない場合があるため注意が必要です(主管税務署により違いがあるかもしれません)。
・所得控除について:
次は所得控除について解説しようと思いましたが、このペースだと記事がとても長くなりそうなので(笑)、続きは第2回として公開しようと思いますm(__)m。
・第1回のまとめ:
専業投資家になると、国民健康保険に加入しなければならない。
前年の収入で保険料が決まる。
年間500万円の所得で年間約75万円の保険料が必要。
市区町村によって保険料は違う。
都会ほど保険料は安い。
頭打ち(限度額)に達するとそれ以上は保険料が上がらない。
国民健康保険料は高い。と思う。。
※参考:山口県宇部市の国民健康保険のHP
余談ですが、最近はYOASOBIのAyaseさん(宇部市出身の方のようです)の影響で同市のゆるキャラ「チョーコクン」が人気みたいです(ホームページにいました(^^))。
さて、今回は国民健康保険について半分解説してみました。
国保料は高い。。これに尽きます(TT)。
第2回では、国民健康保険において気を付けるべき落とし穴等について解説してみます。
とても長い記事になりましたが、最後まで読んでいただきありがとうございましたm(__)m
※第2回はこちら